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肝細胞癌の治療後の経過観察

 肝細胞癌はB型肝炎やC型肝炎、さらにアルコール性肝障害といった慢性肝疾患から発生します。一度癌が発生した肝臓は肝全体に発癌の可能性があるといわれており、たとえ最初の癌が初期の小さいものだとしても再発の可能性が高い癌です。すなわち通常の癌と同じようにはじめの癌からの転移が再発として明らかになる場合(多くは2年以内と言われています)と、新たに慢性肝疾患から発癌してくる場合があります。特に後者の場合は初発からの期間に関係がなく慢性肝疾患が進行していくにつれ可能性が高まります。そこで初回治療後の診療において重要なのは、再発の早期発見とともに背景の肝疾患の進行を押さえて発癌の可能性を低下させる必要があります。また背景の肝疾患が進行してしまうと癌に対する治療も十分にできなくなる場合があり肝機能の維持は重要です。当科は初期治療以上に経過観察を重視しており、肝癌の治療経験が豊富でない病院で経過観察されている方は一度専門医にチェックしていただくことをおすすめします。そのためのポイントを以下に示します。

定期的な検査

 肝細胞癌に関して、治療後も定期的な画像診断と腫瘍マーカーの測定を行い早い断簡での再発の発見に努めます。以前は超音波検査とCTもしくはMRIを組み合わせていましたが、当院の成績では再発病変の検出率が超音波では71%に対しCTやMRIでは90%超でありさらに新しい造影剤であるEOBを使用するとCTでも検出できない病変が検出されることが多くあっため、現在はEOBを用いたMRIを基本としてそれに腫瘍マーカー測定を組み合わせて再発をcheckしています(4から6ヵ月ごと)。しかし腎障害や体の中に金属を入れている方の一部、閉所恐怖症の方はMRIの施行が困難ですのでCTなど他の方法を用いています。EOB-MRIは造影MRIのうち最近開発されたガドキセト酸ナトリウム(EOB)を用いて行う検査法であり、2013年6月にMRIを1台増設したことを機に、積極的に活用しています。EOBは正常肝細胞に取り込まれやすくなっていますが、肝細胞癌では正常肝細胞が存在しないため、EOBが取り込まれません。そのためEOB注射20分後にMRIを撮像すると、肝細胞癌の部分は正常肝細胞の部分にくらべ黒く抜けて映ります。造影CTとMRIの使い分けに関してまだまだ議論があるところですが(長所と短所は表参照)、当科では積極的に撮像し肝細胞癌の診療に役立てています。
 以下に両者の比較とEOB-MRIが有用だった症例を提示します。またEOBが用いられない患者さんでも脳梗塞の早期診断に用いられる拡散強調画像(造影剤不要)が腹部MRIでも撮像されるようになりこちらも活用しています。

  造影CT 造影MRI(EOB使用)
長所 画像が鮮明 病変の検出能が高い
撮像時間が短い 様々な撮像法により質的診断に有用性高い、 特に腎障害やアレルギーの患者さんにも拡散強調画像で検出可能
肝以外の情報も得られる 腫瘍の特異度が高い
短所 腎障害、アレルギーに注意が必要 副作用はCTの造影剤より少ないが腎障害時は不可逆的な皮膚障害のため禁忌
血流障害と腫瘍の識別が困難 ペースメーカーや一部の金属が埋め込まれていると不可
  呼吸停止時間がCTより長い
  画像の輪郭が不鮮明
  枚数が多く読影が面倒

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再発の予防

 肝細胞癌に関しては、かならず再発を予防できる方法は残念ながら確立されておりません。しかし肝炎の炎症を抑えることと、肝機能を維持すること、さらにウイルスが原因の場合はウイルスに対する治療を行うことで再発率が低下したとの報告があります。また肝硬変まで進んでいる場合は、それに伴う低蛋白血症にたいしての栄養療法(分岐鎖アミノ酸製剤の内服)も再発抑制に有用とされています。当科でも特にC型肝炎に対する経口抗ウイルス薬やB型肝炎に対するエンテカビルといった抗ウイルス薬や、肝硬変に対する分岐鎖アミノ酸製剤の内服を積極的に行っており、再発予防に努めています。特にC型肝炎は新たに開発された経口抗ウイルス薬でほとんどの方が直るようになりました。この薬は飲み薬で3週間ほどの服用ですみ副作用もほとんどありません。当科でも100名以上の患者さんに処方しており治癒しなかった方は他疾患合併して内服を中断した1名のみでした。80歳以上の高齢の方も1/3程度でしたが問題なく治療できました。この治療を受けた患者さんが本当に肝癌の再発の危険が低下するかは今後の観察が必要ですが、再発する患者さんが明らかに減った印象はあります。

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再発時の治療

 基本的には初回治療と同じように行っており局所治療が基本で、再発の回数による制限は設けておりません。しかし再発を繰り返すことにより個数が増加する場合や、急に増大する場合、さらには血管内に進展した場合などには残念ながら局所治療の適応ではなくなりますので別項のような治療へ切り替えます。また肝以外の臓器、肺や骨の頻度が高いのですが、に転移した場合は生命予後を規定する病変が肝か否かにより治療方針を決定し、肝がより重要と判断した場合はラジオ波治療を行う場合もあります。

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進行肝細胞癌に対する治療

 癌が多発の場合や、増大した場合、さらには血管内に進展した場合などには経動脈的に抗癌剤を注入しさらに塞栓物質を併用する動注療法を中心でした。これはカテーテルを血管造影の手技で肝動脈まですすめて抗癌剤およびジェルパートという塞栓部室を注入する方法を行っています。この方法は治療が終わればカテーテルを抜去するため術後の4時間位の安静のみであり、負担が少ないと考えます。しかし最近ではRFAといった局所治療が困難な進行した場合や他臓器に転移した場合は分子標的薬ソラフェニブという内服で用いる抗がん剤を用いて治療しています。さらに最近は二次治療でレンバチニブやレゴラフェニブも発売されており当科でも前者は使用しております。いずれ成績をまとめてご報告したいと考えております。

 以上肝細胞癌の経過観察と進行例に対する治療について解説いたしました。肝癌は治療後の観察が治療そのものと同じくらい重要であり使節間の差が顕著になる疾患です。他院で治療した患者さんでも、その後の経過観察や追加治療を希望される方は消化器内科後藤の外来を受診してみてください。

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